食中毒の一種である腸管出血性大腸菌は腸管内で出血性の腸炎を引き起こします。グラム陰性桿菌で毒素を産出するため重篤化しやすく、特に乳幼児や小児、高齢者、既往症などがある人は体力や抵抗力が弱いので注意が必要です。
グラム陰性桿菌が産出する毒素はベロ毒素と呼ばれ、腎臓にある血管内皮細胞を攻撃し破壊するため、体内の保護機能により血小板が凝縮します。その箇所に血液の凝固に関わる繊維状タンパク質であるフィブリンが付着し、血管内を圧迫することになります。血小板やフィブリンによって詰まった血管の中を赤血球が通る時に破砕され溶血し、溶血性尿毒症症候群を発生することで急性腎不全を引き起こしてしまうのです。
食中毒は日常的に食べている食品から引き起こされるため患者によっては軽く考えてしまいがちですが、命に関わる可能性を含めて看護師は適切なケアを行う必要があります。
主に下痢や嘔吐の症状が見られますが、市販の下痢止めなどを使用して症状を悪化させている場合も少なくありません。食中毒が疑われる患者が受診した際は、まず看護師が問診を行うことが多いです。そのため、患者のバイタルサインを確認しながら1週間に食べた食事や症状の発生時期、程度などのヒアリングだけでなく、既往歴や服薬の有無も確認しておきます。
また、ベロ毒素によってけいれんや意識障害などの脳症を引き起こすこともあるので注意が必要です。溶血性尿毒症症候群の際は、けいれん発作や昏睡が起こる前に顔面の蒼白、倦怠感、浮腫、乏尿などが見られます。また、脳症は頭痛や傾眠傾向、幻覚などが予兆として現れるため、症状の観察を細かに行いましょう。